“人の成長”と“営業成果”を両立するインサイドセールス組織の立ち上げ

代表取締役 / 共同創業者 植田 泰史

”人の成長”と“営業成果”を両立するインサイドセールス組織の立ち上げ

見込み顧客に対して非対面で営業活動を行う、インサイドセールス組織への注目が年々高まっています。

一方、狙った効果が出ず、一度組成したインサイドセールス組織を解体してしまったり、必要性は理解しているものの立ち上げ方や正しい運用方法がわからず苦労されているケースも多いのが実情です。それは一体なぜなのでしょうか?

弊社はこれまで業界・規模問わず、様々な企業の営業組織におけるセールスイネーブルメントの導入支援を行ってまいりましたが、とりわけインサイドセールスにおいては“仕組み化”が先行しがちで、組織で働く“人”への焦点が当たっていないという課題が見えてきました。

本記事では、インサイドセールス組織で働く“人”にフォーカスし、組織として成果をあげるだけなく、組織で働く人が継続的に成長する組織たらしめるためのポイントについて解説していきます。

1.見落としがちなインサイドセールス組織立ち上げ時の論点

まず、インサイドセールス組織の立ち上げを検討する際には、どのようなことを検討すべきでしょうか?
下のスライドでは、弊社がお客様へのご説明の際に使っている一般的な検討の論点について整理しています。

インサイドセールス組織のミッション、役割、KPI

組織のミッション、役割、KPIについて予め整理しておくことで、戦略、戦術に一貫性をもたせることができたり、チームメンバーの連携が強化されたり、PDCAをまわしやすくなったりと多くのメリットがあります。

おそらくインサイドセールス組織の立ち上げを検討されている方は、このような論点を検討し、組織化にチャレンジされているのではないでしょうか。

ところが、上述の論点を検討していったとしても、必ずしも成果を創出できるとは限りません。それは、成果を実際に創出する“インサイドセールス人材”に関する検討が十分になされていないからです。“組織”について十分に検討しているにもかかわらず、組織に配置される“人”については、人員配置のみで実際の運営や業務、育成は現場任せといったケースが多く存在しています。

皆さまは、組織設計のイメージだけでなく、実際にインサイドセールスが日々実施する業務の詳細について、しっかりとイメージできていますか?

次は、インサイドセールスの実際の業務に関して触れていきます。

2.インサイドセールスとは?営業やテレアポとの違い

インサイドセールスと聞くと、従来型の外勤営業(フィールドセールス)やテレアポとの違い、具体的な業務内容について疑問を持つ方も少なくありません。

インサイドセールスの定義は様々ですが、ここでは多くの組織が導入しているように、インサイドセールスを「“商談化”を目的とした“電話/メールをおもな顧客接触手法”」と位置づけ、お話を進めていきたいと思います。

目的を“商談化”とするか、“アポイント”とするかがインサイドセールスとテレアポでは異なり、業務内容にも大きく影響しています。“商談化”の定義もまちまちではありますが、見込み顧客が「製品の話を聞いてみたいから、とりあえず一回お会いしましょう」という程度の温度感では“商談化”とはいえません。

インサイドセールスには、顧客の課題をヒアリングした上で、自社の製品やソリューションが解決策となりうると顧客が判断できる状態まで持っていくことが求められます。そのためにも、インサイドセールスは様々なチャネルを駆使し顧客の情報を拾い、課題の仮説をたて、荷電やメールを通じて顧客と実際に対話し、課題と解決策の方向性の合意を相互が認識した上で、訪問をセットすることが必要です。

また、インサイドセールスの主な顧客接触手法が“電話/メール”といった非対面の手法に限定されているという点も大きな特徴です。顧客訪問がメインのフィールドセールスは、実際に顧客と対面し(コロナ禍ではWeb会議上での対面コミュニケーションが増加)、相手の反応を伺いながら1時間程度の打ち合わせを実施することが基本であるのに対し、インサイドセールスは顧客の反応が分かりづらい状況の中、コミュニケーションをとれる時間も長くとも15分程度と非常に限定的です。このような厳しい縛りがある状態で、高いゴールを達成することが求められているという点だけ見ても、インサイドセールス業務の難しさは想像に難くありません。

3.なぜ今インサイドセールスが注目されるのか?インサイドセールスの有用性

現代のインターネット社会においては、検索すれば各種企業情報が簡単に手に入るようになり、製品や顧客事例など、顧客がサービスの導入を決定するために必用な情報はたいてい営業に問い合わせる前に収集が完了しています。コロナ禍も相まって、その勢いは止まりません。

「良い製品がありますので紹介させてください」という営業トークではアポイントすら取れない時代になったのです。

このような状況下、むしろ顧客が欲しているのは、「今考えている課題に対しどのような解決策が最適なのか。自身の収集した情報だけではいまいち確信が持てない」という心理状態に対する解決策です。

こういった課題をもつ顧客には、インサイドセールスの業務内容がぴったりはまり、インサイドセールス組織の立ち上げにより成果を創出している企業が増えているからこそ、ますます注目度が高まってきているのでしょう。ただ、インサイドセールスが顧客と質の高いコミュニケーションがとれれば大きな成果につながる一方、単なる製品紹介に留まってしまったり、電話越しで対話ができないような状態だと、全く成果が出ない、それどころか自社のイメージを損なう可能性すらありますので、高いスキルセットが求められているのです。

4.インサイドセールスに配置すべき人材と求められる役割

では、インサイドセールス組織を組成する際に、どのような人を配置すべきなのでしょうか?マネジメント、メンバーの双方を見ていきましょう。

<インサイドセールスマネージャー>

・全社観点からインサイドセールス組織の役割・重要性を認識している
このポイントは非常に重要ですが意外と見落とされており、失敗につながったケースも散見されています。特に立ち上げ期は様々な組織の壁にぶつかります。「アサインされたから仕方なくやる」というスタンスでは継続できません。

・“型化思考”を持っている
インサイドセールスでは、「トークスクリプト」「ターゲットリスト」「業務フロー」「システムの使い方」など、様々なことを型化、仕組み化していく必要があります。一点突破の営業力も大事ですが、組織としての型作りに長けている人が必要です。

・トライ&エラーを厭わない
前提として、上記“型”は「現場での様々な失敗」→「原因分析」→「再アクション」の繰り返しから生まれます。このサイクルをいかに早く回せるかも重要なポイントですので、組織のリーダーが率先して動いていく必要があります。

・横串の連携が取れる
インサイドセールスの成功には、マーケティング部門や営業部門との連携が必要不可欠です。他部署と円滑なコミュニケーションが取れ、お互いの意思疎通が図れるリーダーでないと、組織間の責任の押しつけあいが発生してしまい、分業制のメリットが損なわれてしまいます。

<インサイドセールスメンバー>

・自責思考&粘り強さ
インサイドセールスでは、「リード段階で興味喚起できていないので営業に繋げられなくても仕方ない」「わかりにくく複雑な商材なので非対面では提案しづらい」「質の高いリードを渡したのに営業が受注してくれなかった」など、他の人の責任にしてしまいたくなる場面もあるでしょう。それは非常に簡単なことですが、真に価値を発揮できるインサイドセールスには自責思考が求められます。

また、1回の電話ではすぐに商談化しないケースも多々あり、創意工夫してお客様とコミュニケーションをとり、商談まで持っていく粘り強さも重要です。

・顧客に興味関心が持てる
インサイドセールスの業務は、“製品を紹介する”のではなく、“顧客の課題を引き出し、解決策を考える”ことです。ゆえに、「顧客はどのようなビジネスを営んでおり、どのような課題を抱えているのか」ということを常に考え、ヒアリングする必要があります。そのためには前提として顧客への興味関心が非常に大切です。

・自社製品・ソリューションが好き/自信がある
弊社が過去お付き合いしてきた企業、営業組織において、「製品に自信はないけれど、なんとか商談化スキルを上げてより多くの商談を作ろう」というスタンスで成果をあげているインサイドセールスの方は見たことがありません。「世の中の課題解決に役立つ素晴らしいソリューションなので多くの人に広めたい」という想いは、電話越しでも相手に伝わっているのです。

・トライ&エラーを厭わない
インサイドセールスマネージャー同様、メンバーにも行動量による改善サイクルの構築が求められます。考えすぎて動けない人よりも、どんどん動いて経験を積み重ねることができる人の方が適性は高いです。

5.成長するインサイドセールス組織のポイント

ここまで、インサイドセールス立ち上げ時のポイントや具体的な業務内容、求められる役割についてお伝えしてきましたが、これらを検討するだけでは、インサイドセールス組織は成長し続けられません。

人・組織両面で成長していくためには、結果としての商談数の推移だけでなく、下のような細かいデータを見える化することが非常に大切です。

インサイドセールスで見える化する細かなデータ

このような数字をCRMツールやSFAツールから分析できるようにしておくことで、組織・個人双方で次なる成長課題の特定が可能となります。例えば、次の図が示しているように、AさんとBさんの成果は同じだったとしても取り組むべき課題が大きく異なるケースがあります。

ツールから分析する取り組むべき課題

左のAさんは多くの荷電量は確保できているものの、商談化率が悪く、ターゲティング、もしくはトーク内容に課題がある可能性があります。このような場合Aさんには、荷電リストの見直しや他のメンバーの架電場面同席などによるトークスキルの向上が求められます。

一方右のBさんはどうでしょうか?Aさんと比べると商談化率が高く、トーク内容は良いのかもしれませんが、荷電量が少ないことが改善点としてあげられます。Bさんに対しては情報検索のスピードアップや、事例を覚えることによる仮説構築時間の削減などといった打ち手が有効と考えられます。

このケースのように、結果としての商談数といったデータしか見えていないと、本質的な課題を見落としてしまい改善を図れずに、組織・個人ともに継続的な成長が実現しにくくなってしまいます。

インサイドセールスの成長にとって、SFAなどのツールは非常に役立つでしょう。
量×質のデータが取れてこそより精緻な分析が可能となり、結果最適な育成システムが機能することで、継続的な改善が見込める組織になっていくのです。

このように、データ活用は組織の課題解決に効果的ですが、メンバーのモチベーションの観点からも大変有効です。

データを取得できるようになると、一人ひとりの具体的な成長課題が明らかになるだけでなく、成長が成果にどう影響しているのかも明確になるため、成長実感を得やすくなります。
データによるメンバー一人ひとりの成長の可視化と日々の業務を通じて得る成長実感は、成長し続けるインサイドセールス組織にとって、欠かせない大切な要素なのです。

6. 成功しているインサイドセールスの特徴

これまでの様々な企業のインサイドセールス組織との出会いの中で、成果を創出し続けているインサイドセールスに共通する一つの大きな特徴が見えてきました。

それは、インサイドセールス組織で働くメンバーが“生き生きしている”という点です。

当然、高度なスキル/マインドセットが求められるインサイドセールスは、営業として毎月の高い目標達成に向けて日々奮闘されていると思います。

その中で、「素晴らしいソリューションを世の中に広めたい」「お客様の課題解決のパートナーとして役に立ちたい」という想いから、メンバーは成長に向けた日々の努力を惜しまず、マネージャーはメンバーの成長と成果の連動が可視化された環境を整えることで、強いインサイドセールス組織を作り上げることができるのではないでしょうか。

7.まとめ

昨今インサイドセールス組織を組成し、成果創出に成功している企業が増えてきています。その成果をあげているのは、“組織”ではなく“組織で働く一人ひとり”であることを忘れてはなりません。

一人ひとりのインサイドセールスが生き生きと働き、活躍しているからこその成果であることを念頭に置き、ぜひインサイドセールス組織の立ち上げにチャレンジいただければと思います。

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