Points

  • 営業コーチングが注目されている3つの理由
  • 2つの営業コーチングを使い分ける
  • 営業アクションを促すためのコーチングの問いかけ

コロナ禍・リモートワークが浸透している今日、上司・部下間のコミュニケーションは今まで以上に大きなテーマになっています。

多くの日本企業の営業マネージャーは、プレーヤーとして自身のノルマ達成とともに、部下の業務進捗管理・育成・指導などのマネジメントの役割を負っていることが多く、昨今のリモートでのコミュニケーションに対して今まで以上に課題や負荷を感じている方も多いのではないでしょうか。


「営業コーチングが注目されている3つの理由」

セールスイネーブルメントという営みの中で、重要な役割を果たすものとして注目を集めているのが「営業コーチング(Sales Coaching)」です。「営業コーチング」とはマネージャーが営業担当のパフォーマンス向上を目的に、継続的に個別指導や支援を行う営みのことです。単に「仕事の指示」をするのではなく、インタラクティブな対話を通じて「目標達成のための支援」や「成果につながる行動の強化」などを行っていきます。

ではなぜ「営業コーチング」が注目を集めているのでしょうか。
理由は大きく3つあります。

  • リモート下においてコミュニケーションの時間の確保につながる
  • 答え(上司からの指示)ではなく、答えに至るプロセスや観点を育みやすい
  • 部下育成・成績向上への効果が確認されている


まずは1点目から見ていきましょう。
オフィスという同じ空間で仕事をしていた時には自然にキャッチできていた部下の様子がリモートワークになると急に遮断され見えなくなります。部下側からしてみても「声がかけづらい上司」がますます遠い存在に感じられることでしょう。営業コーチングは双方向のコミュニケーションの頻度と時間を意図的に確保することにつながります。

次に2点目です。
自主的に動ける部下が少ない、と嘆く管理職は多いと思います。ただし、部下へのマネジメントスタイルをよく見ると「指示型」で「XXXをいついつまでに終わらせて報告すること」という「指示」で終わっている場合が多いのではないでしょうか。「指示型」のスタイルは管理職としては「やりやすい」マネジメント方法ですが、部下の思考を育むことには向いていません。「指示型」が機能するのは知識や経験が不十分な若手や新人で、これはいわゆる「Teaching」のアプローチです。

TeachとCoachは分けて考える必要があります。コーチングではゴール達成のためのやり方(答え)は教えません。その代わりにそこに至る「観点」や「気づき」を通じて主体的な行動を促していきます。

顧客ニーズに柔軟に対応するためには「指示」を待っていては対応が遅く、主体的思考を通じて問題解決を部下自らが進める必要があります。マネージャーから日々投げかけられるコーチングの問いはその訓練として最適と言えます。

最後に3点目です。
これは効果があるからです。少しデータをご紹介します。

  • 営業コーチングを導入している企業はそうでない企業と比較し、28%成約率が高かった
  • 週に30分程度の営業コーチングを受けているセールスパーソンの成約率は43%、週に2時間程度の営業コーチングを受けているセールスパーソンの成約率は56%であった
  • マネージャーが自身の営業活動よりもコーチングに多くの時間を費やしている企業では、予測案件の勝率が8.2%高く、全体の収益達成率も5.2%高かった

(出典:CSO Insights

このように営業コーチングが営業実績にプラスの影響を与えることが実証されていることがわかります。


「2つの営業コーチングを使い分ける」

営業コーチングには2種類あります。Deal CoachingとPeople Coachingです。これは営業マネージャーの役割が突き詰めて言えば「数値の達成」と「部下の育成」の2つだからです。

Deal Coaching、とPeople Coachingの大きな違いは目的です。

  • Deal Coaching:営業目標の達成(数字)のための支援
  • People Coaching:メンバーの育成を助けるための支援


この2つを掛け合わせて、部下メンバーの商談状況と育成状況の両面から部下が自主的に次に必要なアクションを取るための支援をコーチングを通じて行っていきます。

例えば以下のような営業プロセスがあったとします。

Deal Coachingでは、部下メンバーが目標値を達成するためにこの一連のプロセスの中のどこで引っかかっているのか、次のフェーズ(例えば、『ソリューション提案』のフェーズから『意思決定者との合意』のフェーズに)に進むためにはどういったアクションが必要なのかを対話を通じて部下メンバー自身に気づかせます。

他方、People Coachingでは、必要なアクションを取る上で必要なスキルや知識は何なのか、それをどのように習得していけばいいのかを部下に気づかせます。

ポイントは上長の印象ではなく、スキルマップやアセスメントなど客観的な情報をよりどころにすること、そして部下が自主的に次の具体的なアクションを取れるよう適切な「問い」ができるようになることです。


「営業アクションを促すための問いかけ」

コーチングにおいてもキーとなるのは、なんといっても「問いかけ(質問)」です。
営業における「問いかけ」のベクトルは営業アクションにつながることです。
コーチングの質問の技術は学べば学ぶほど奥深い世界ではありますが、ここでは部下への問いかけに際して以下の3点を意識してみることをお勧めします。

  1. 「意思決定者視点」で問いかける
  2. 「影響範囲の視点」で問いかける
  3. 「あるべきToBeの視点」で問いかける


1の例
例えば、「今月の重要商談が受注できそうか」を確認したいとします。

普通の問いかけは

  • 「今月の重要商談は受注できそうかな?」と聞くことです。
  • 「あの案件、今月いける?」とフランクに聞くケースも多いでしょう。

一方で、営業コーチングの問いかけは
「顧客の意思決定者が今月発注したい理由は何かな?」と顧客視点で聞きます。
「顧客の意思決定プロセスは今どこにある?」という質問もありです。
前者の質問は、「Yes/No」で終わります。後者の質問は答えられない場合にとるべきアクションが明確になります。

2の例
例えば、「顧客に対する自社のソリューションメリット」を確認したいとします。

普通の問いかけは、

  • 「うちの製品で顧客の何が解決できるの?」と聞くことです。

一方で、営業コーチングの問いかけは

  • 「顧客の対象部門の上長は何がメリット?関連するマーケティングやサポート部門のメリットは何?部下メンバー100名のメリットは何?」と多角的に聞きます。

前者の質問は「単一角度」の回答になりやすいですが、後者の質問は多角的に解像度高くメリットを整理する視点が備わります。

3の例
例えば、「顧客からの要望に対してどのような提案がいいか」を部下に確認したいとします。

普通の問いかけは、

  • 「顧客の要望に対してどのような製品を提案すべきかな?」と聞きます。これはこれで悪いわけではありません。

一方で、営業コーチングの問いかけは

  • 「そもそも顧客の顧客は何を望んでいるのかな?それに対して本来あるべき提案は何だろう?」と聞きます。

前者は「顧客から言われたことに対して提案する」意識になるのに対して、後者は「顧客も気づいていない視点から提案する」視野の広がりを持たせることができます。

このように、「問いかけ」一つで次のアクションや捉えるべき視野が全く異なってきます。上記3つの例で示したように、意識しないと「前者」であげたような問いかけになりがちです。営業マネージャーの皆さんは自らの問いかけが部下のどのような営業アクションにつながるかを意識していただきたいと思います。

以下はあくまでも一例ですが、営業コーチングの場面で使える質問サンプル集を作ってみましたのでご活用いただければと思います。

今回はセールスイネーブルメントにおいて、営業コーチングの役割・効果・実践につなげるためのコツについて見てきました。意識して質問をしてみることで、部下メンバーとのコミュニケーションや育成場面で変化が感じられると思います。ぜひ実践してみください。