人事とイネーブルメントによる育成スコープの違い

人事とイネーブルメントによる育成スコープの違い

人事部門が提供する「育成」とセールスイネーブルメント(Sales Enablement)部門が提供する「育成」の違いは?

育成に関わる方であれば上記のような疑問を持つ方が多いかもしれません。育成の受け手から見た場合「人事部門でもイネーブルメント部門でも結局育成は一緒でしょ?」と感じるかもしれません。

1.人事部門による育成とイネーブルメントによる育成

人事部門による育成とイネーブルメントによる育成は、2つの軸でその違いを分けて考えることができます。

  • 縦軸:課題の固有性(育成課題が全社共通か、部門固有か)
  • 横軸:育成の対象(育成対象が全社共通か、特定部門か)

つまり、「誰の、どのような育成テーマを扱うか」ということです。図に表すと以下のような整理になります。

人事とイネーブルメントによる育成の違い

人事部門は、一般的に全社を支援する部門です。育成テーマも全社に関わるものを一般的に扱います。例えば以下のようなテーマです。

  • コンプライアンストレーニング
  • 新卒新入社員研修
  • 新人マネージャー研修

一方で、セールスイネーブルメント部門は、営業部門の固有の育成テーマがスコープになります。営業部門固有のテーマというのは、簡単に言えば営業ゴールを達成するための育成です。例えば、以下のようなテーマです。

  • 3C視点で新製品の差別化ポイントを訴求するための「プレゼンテーション研修」
  • 効果的に事例を伝えるための「ストーリーテリング研修」
  • オンラインツールを活用して商談を前進させるための「オンラインファシリテーション研修」

全社育成テーマを担う人事部門では、専門性や人的リソースの確保の観点から営業部門固有の業務に近い育成テーマをカバーすることは難しいのが実態です。

企業によって「HRBP (HR Business Partner)」といった役割で「部門人事」を担う方がいるかもしれません。イネーブルメントは概念としてHRBPに近いです。

2.「人事部門の育成」と「イネーブルメントの育成」のコラボレーションポイント

「全社は人事、営業部門はイネーブルメントという役割分担ということは理解できたが、では育成の側面で両者は接点はないのか?」。このように思う方も多いと思います。
接点はあります。組織を支える重要なテーマで接点があります。

それは、「マネージャー育成」です。

組織運営においてマネージャーの役割は非常に重要です。育成施策の展開においてもマネージャーの影響力が大きいと言えます。
営業現場に近い、つまり実務に近いマネージャー育成はセールスイネーブルメント部門が担います。例えば以下のようなテーマです。

一方で、マネージャーが昇進していくと全社視点をもったマネジメント力が求められてきます。階層があがると営業実務というよりも組織全体の運営やリーダーシップを育成する必要が出てきます。これは部門固有というよりも全社共通のテーマです。
上位マネジメント層の育成は人事部門のスコープになります。例えば、以下のようなテーマです。

  • マネジメント共通のリーダーコンピテンシーの習得
  • 次世代リーダーのサクセッションプランの策定
  • 部門異動・ローテーションを通じたリーダーシップ経験の蓄積

共に性質の異なる育成テーマですが、上記テーマは「マネージャーの視点」にたってみるといずれも自身の成長にとって「連続的に支援されるべき育成テーマ」と言えます。この「連続的に支援される」というところが、「人事部門とイネーブルメント部門のコラボレーションポイント」になります。

イネーブルメント部門は、営業メンバーから頼りにされる実務を理解したマネージャを育てる。人事部門は、より全社視点でリーダーシップを発揮できるマネジメント層を育てる。この両方がうまく連動することで「分厚い人材の層」と「強い組織」ができてくると言えます。

3.海外では、イネーブルメントの育成対象が営業以外に広がりつつある

現在日本でもセールスイネーブルメントが広がりつつありますが、海外ではその範囲が営業以外に拡大しています。

顧客接点をもつ全ての部門に対するイネーブルメントへ拡大

ポイントは、顧客接点を持つ部門(Customer-Facing Role)に対象が拡大しているということです。

例えば、以下のようなイネーブルメントRoleが増えています。

  • インサイドセールスイネーブルメント
  • カスタマーサクセスイネーブルメント
  • パートナーイネーブルメント
  • SEイネーブルメント
  • Revenue イネーブルメント


セールスイネーブルメントは、「営業成果を起点とした人材育成」です。成果起点で育成施策が進められるようなってきた背景には、クラウド等のシステムを活用し、営業実績や活動データが取れる環境が整ってきているということがあります。

上記に挙げた顧客接点の部門でも類似したデータが取れる環境が整ってきました。

  • 顧客の製品活用率や解約率、オンボーディングのデータ
  • パートナー企業の営業データ
  • SEによる商談貢献データ
  • 顧客獲得から案件受注、契約継続までのRevenue全体のデータ


これらのデータが取れるということは、顧客接点を持つ部門でも成果起点でイネーブルメントが設計できるということになります。
このように、海外では営業から始まったイネーブルメントの取り組みが、その前後左右の顧客接点部門に広がり、顧客接点全体を底上げする取り組みへと進化しています。

人事部門とコラボレーションして組織の「縦のライン」を強くするイネーブルメント、そして営業に関わる前後左右の顧客接点を強くする「横のライン」のためのイネーブルメント。イネーブルメントはその支援範囲を広げて組織貢献のあり方を拡大してきています。

「セールスイネーブルメントチームの人選」を読む>>

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